

高山荘 華野のエントランスで、ひときわ目を惹くアートオブジェ。
それが、200年以上前のフランス教会の椅子と西洋カルタによる展示です。古い木製の椅子の上には花器が設えられ、壁面には、日本人作家が作成した1点物の枠に収めた西洋カルタのディスプレイ。実はこのカルタ、かつて庶民の博打で使われていた大量生産の木版印刷品で、彩色も簡素な合羽刷り。しかしその不自由さが逆に親しみと美しさを引き出し、今では“アノニマス・アート”として静かに語りかけてきます。
カルタの一枚、ハートのエースの裏には、当時の借用書のような手書きのメッセージがびっしり記され、時代の空気と人の気配が今もなお残されています。裏面をご覧になりたい方はぜひスタッフにお声かけください。
この作品群は、美の目利きとして知られる坂田 和實氏から館主が譲り受けたもの。坂田氏はこのカルタを床の間に飾っていたといいますが、館主はその遊び心とプリミティブアートの本質に惹かれ、当館の“顔”ともいえるエントランスに展示することを決意しました。
重厚さとユーモアが同居するこの演出は、訪れる人に小さな驚きと、これから味わう華野の物語にきっかけをあたえてくれるでしょう。