

有馬温泉の隠れ宿、高山荘 華野。そのラウンジに一歩足を踏み入れると、柔らかな光の中で静かに存在感を放つ一枚の抽象画が目を引きます。
それは、現代美術を代表するアーティスト、李 禹煥(リー・ウーファン)氏による作品です。
建築家 安藤 忠雄氏とともに、直島に「李禹煥美術館」を創設したことで知られる彼の作品は、世界中で高く評価されています。
この作品は、湯布院の「亀の井別荘」や熱海の「蓬莱」など、日本屈指の名宿でも展示されているものと同様の作風を持つ一作。華野の館主が、長年師事してきた華道家から譲り受けたもので、直感的に惹かれ、ラウンジに展示することを決めたそうです。
幾何学とも自然ともつかない、余白と筆致の対話のようなその一枚は、訪れる人それぞれの感性に委ねられた解釈を導きます。「ただ目の前にあるものと向き合う」その時間こそが、旅の醍醐味のひとつになる——そんな思いが込められています。
アートを“飾る”だけではなく、“もてなす”こと。
高山荘 華野では、ラウンジに流れる時間の中にこそ、宿の精神が宿ります。